がん相談

その他の療法

・アルカリ療法

・複合免疫療法

・駆虫剤療法

・意外な薬ががんに効く

  • アルカリ療法

がん細胞は好んで酸素を使わない解糖系によってエネルギー(ATP)を産生します。1回に2ATPしか産生できませんが、解糖系は仕組みがシンプルなため高速で大量のATPを産生できます。この時、大量の水素イオンを放出することにより、がん細胞は周囲をpH6.5という正常細胞の住みにくい酸性環境に変えてしまいます。正常細胞はpH7.4のアルカリ性環境に住んでいます。したがって、がん細胞周囲の酸性環境を中和するアルカリ療法に注目が集まっています。家庭でできるアルカリ療法は重曹とクエン酸です。シモンチーニは重曹を用いましたが、重曹にはかなりの量のナトリウムを含むため断塩療法には不都合です。私はクエン酸療法をすすめています。点滴としてTHAMがあります。こちらは酸塩基平衡の専門医でないと使えません。

シモンチーニ医師はイタリアローマ出身の腫瘍医です。彼の基礎理論は、、がんは菌類であるということです。この100年間がんは遺伝子の変異であるという仮説に基づいています。彼はこの遺伝子変異説を信じて疑わない医学会に強い不信と疑念を持っています。シモンチーニによると生物界ではがんは菌類の侵略によって起きます。だから同じことが人でも起きるという議論は可能なはずであり、菌類なかでもカンジダはがんに関係していると主張しています。現代医学はがんが進行し末期になると生体内にカビが生じてくる現象を結果として捉えており自分は原因として捉えているから議論のかみ合うはずはないと主張しています。

がんは菌類であるという説から彼は実際に重炭酸ナトリウムを用いて25年以上固形がんの治療を続けており、多数の成功例を発表しています。しかしメディアは取り上げても学会が取り上げることはなく現在に至っています。

私の意見として分かりやすい例は膣カンジダ症です。強い痒みと白濁したおりものを特徴とする病気です。多くの製薬メーカーが様々な種類の抗菌薬を発売しています。市販の抗菌薬で効果のない膣カンジダ症に重曹水による洗浄を試してみるのも興味深いと思います。重曹水の濃度は舐めてしょっぱいぐらいのアバウトな濃度でいいようです。

シモンチーニは『がんは菌だ』という本を出版しています。患者の声、ビデオ映像もWebサイトで見ることができます。

私の友人に手術不能の舌がんの男性がいます。放射線と抗がん剤併用療法を受けたそうです。彼の場合もシモンチーニの言う重曹水でうがいをするのも興味深い方法と思います。重曹水でうがいしても害はないし、もし本当に効けば儲けものだからです。

私の友人に皮膚がんの女性がいます。シモンチーニによると7%のイソジンチンキを患部に一日20~30回塗布します。この方法は主治医との関係において誰にも出来るわけではないです。しかし興味深い報告です。

彼の理論では食道がん、胃がん、直腸がん、子宮頸がんなど素人でも重曹水を飲んだり浣腸したり洗浄したりと医療の普及していない発展途上国では歓迎されているようです。⇒実際私を含め多くの末期がんの人たちが重曹を飲んでいます。効果はさておき何の副作用もなく体調が良くなったという人もおられます。

“固形がんのシモンチーニ療法“を全訳し読んでみた感想は無害無浸襲のところに興味を持ちました。見放されがんの人たちに重曹水の内服、重曹水の点滴療法は副作用はほとんどないため紹介する価値はあると思います。⇒悪疫質に近い末期がんで酸塩基平衡の崩れた方の是正に5~7%の重曹液の点滴は一般的に行われる治療です。私自身ICU勤務時代メイロン点滴による治療を行った経験があります。

 

<考察>

癌細胞を取り巻く微小環境をアルカリ化することによって癌の発育を抑制する考えは、私は正しいと思います。その根拠として、古く1950年代から腫瘍微小環境の特徴として酸性環境の存在が知られています。すなわち固形癌における低酸素、低栄養といった劣悪な環境は解糖系亢進の結果と捉えられており腫瘍の悪性化に関する関与の詳細は不明のままでした。しかし最近の研究では固形癌における不完全な血管構築による血流不全から惹起される劣悪な腫瘍の微小環境は正常に比して明らかに酸性環境にありこの酸性環境が特異的な細胞応答や癌の代謝変化を通して腫瘍のさらなる悪性化、そして転移、浸潤促進、さらには薬剤耐性の獲得などを引き起こすことが解明され、酸性環境における腫瘍の悪性化メカニズムについての研究が進んでいます。

最近ではミナビッセルがシャーレ内の実験ですが、がん細胞の腫瘍を取り巻く微小環境(microenvironment)を正常化するとがん細胞は正常細胞に戻るとの衝撃的な映像を公開し世界を驚かせました。この映像はYutube TDDで見ることができます。分かり易く言えば、固形癌では腫瘍内の血管は豊富ですが、その血管構造は未成熟で乱雑で不規則、すなわち無秩序な血管構造のため血管が豊富にもかかわらず血流が少ないという特徴を持っています。そのため、腫瘍細胞を取り巻く微小環境は低酸素低栄養のため過酷な状況にあり酸性化を来すと考えられています。研究成果の発表を見ると、健康な組織はph7.4と弱アルカリに保たれていますが、腫瘍においてはphが6.8まで低下することがわかっています。私はこういった酸性環境を重層療法により弱アルカリ化し正常に戻すことは理にかなった治療法と考えています。

一方、固形癌の原因を真菌(カビ)とするシモンチーニの説では重曹治療の効果を理論づけることは率直に言って難しいと考えます。なぜなら真菌の発育最適phは4.0~4.5と非常に狭い酸性環境にあります。この特性だけからすると重曹は著効する可能性があります。ところが真菌の生育可能phは2.0~8.5ととても広い環境にあるためシモンチーニ説を積極的に肯定するには無理があるように思います。

すなわち真菌カビは酸性からアルカリ性の幅広い環境で生きていくことが可能なのです。したがって、即、重曹によるアルカリ化=癌を抑制するという理論には無理があります。重曹効果を第三者的な立場から専門家による基礎的実験的研究が求められていると考えるのが妥当です。

おっとどっこい不都合な問題点あり

重曹摂取の適切な量についての臨床治験報告は見当たりません。重曹の問題は、胃酸と反応して炭酸ガスを発生、げっぷがたくさん出るといったかわいらしい問題ではありません。重曹10gに2.7gのナトリウムが含まれています。これを食塩に換算すると約7gに相当します。20g摂取すると食塩14gになります。断塩ががんを絶つ効果的な方法ですから重曹によって7g~14gと大量の塩分摂取をすることになります。断塩療法を推奨する私としては、重曹よりはナトリウムを持たないクエン酸の内服を推奨します。

参考までに

水守啓さんのBusiess Journalコラム、書籍「底なしの闇の癌ビジネス」紹介しておきます。

 

  • 複合免疫療法

多くの抗がん剤が次々と登場し、がん治療の中心的役割を果たしてきました。抗がん剤でがんをたたき殺傷する標準治療の弊害は多くの患者を苦しめる副作用の側面が反省されるようになりました。そこで登場したのが数多くの分子標的治療薬です。標的となる遺伝子変異を持った患者さんにはよく効きますが、持たない患者さんには無効です。有効であっても1~2年で治療抵抗性により薬効がなくなるケースもあり、かつ副作用も喧伝されたより強く、新しい切り札とはなりませんでした。そこに登場したのが免疫チェックポイント阻害薬です。この薬剤は効く人には持続的に効くが、効かない人には全く無効で有効率は20%と予想外に低い数値でした。そこで、これらの薬剤を効率的に組み合わせる複合免疫療法の時代となりました。さらにワクチン療法が加わり新しいがん治療が始まろうとしています。私の主治医である光畑医師はこの複合免疫療法に詳しく、どなたでも相談にのってもらえます。

光畑医師が行っているリキッドバイオプシーは、採血(採尿)による血液中のがん細胞、がんの遊離核酸(circulating tumor DNA)測定は組織サンプルを用いる場合と比べ低侵襲に繰り返し検査をすることが可能です。したがって、診断や経過予測マーカーとしても使われています。

  • 駆虫剤療法

メベンダゾール

フェンベンダゾール

ベンズイミダゾール系薬剤

50年100年昔、駆虫薬(虫下し)はどこの家庭でも身近なお薬でした。

生活環境、食生活が変わり化学肥料と農薬を使った農業が一般化し、人への寄生虫感染は激減しました。今は愛犬家にとって身近な薬となっています。最近ベンズイミダゾール系の駆虫剤に抗がん作用があることがわかり関心が高まってきました。 駆虫薬は家畜のエサに混ぜられて日々投与されています。スーパーに並んでいる豚肉、牛肉、養殖魚から輸入果実まで様々な食品に駆虫薬や輸入果実の消毒に用いられる抗菌薬の残留が食品安全上問題となっています。ところがこの駆虫薬ががんに効くという細胞実験、動物実験から臨床試験の発表が相次ぎその抗がん作用が注目を集めるようになりました。各国の製薬メーカーは抗がん剤の開発のために莫大な研究費をつぎ込み、さらに治験に莫大なお金を費やしていますが副作用のために没になってしまう薬が後を絶たず、今やメーカーの開発力にも限界が見えてきています。最近注目されている免疫療法にしても、駆虫薬療法にしても、人と感染症との長いおつきあいや長い闘いの歴史を理解し分析する必要がありそうです。皮肉な話、駆虫薬ベンズイミダゾール系薬剤はスーパーに並んでいる食肉に残留している可能性があるものだし、その残留薬剤に発がん性があるのではとメディアが騒いだこともあります。これらの駆虫剤に抗がん作用があるのなら、残留している程度の肉類は食べた方が薬になるのではないか・・・パロディーのような話です。イタリアのシモンチーニさんはがんの原因はカビだとして重曹療法を行い医師免許を剥奪された話は有名です。ピーナッツなどのナッツ類のカビ毒であるアフラトキシンは肝臓がんを引き起こすクラス1の猛毒発がん物質ですからシモンチーニ説を完全否定するのはいかがなものかと思います。

近頃は健康ブームに乗ってオーガニックブーム、つまり有機肥料を使った農作物を多くの消費者が求めています。質の悪いオーガニックならば寄生虫が付いている確率も高くなります。冗談ではなく本当に駆虫剤を服用しなければならない人も現れています。実際に内視鏡検査で回虫が見つかることも珍しくない時代になりました。

駆虫薬ベンズイミダゾール系薬剤で国際的に人に対する使用が認可されているのは医薬品としてメベンダゾール、アルベンダゾール、チアベンダゾール、トリクラベンダゾールの4つです。日本では認可されていないチアベンダゾールはなんと食品添加物として認可されている不思議。少し前まで万有製薬がチアベンダゾールをメンテゾールという商品名で腸管糞線虫や旋毛虫の治療用医薬品として販売していました。ところがイベルメクチンという新薬が開発されたのでメンテゾールは販売中止されました。余談ですが、この新薬イベルメクチンの出身地は静岡県伊東市付近のゴルフ場だそうです。2015年ノーベル生理学・医学賞受賞者大村智先生がこのゴルフ場から持ち帰った土の中にいた新種の放線菌が産生する物質を元にMSDが製品化したのがフィラリア症の特効薬イベルメクチンです。

ベンズイミダゾール系薬剤の多くはカルバメートという構造体を持っています。この構造体から出ている枝の形が少しずつ異なり名前と作用も少しずつ違うお互いお友達です。この枝の形で有効な寄生虫が少しずつ変わるように、もしかしたら人のがんもこの枝の形に対する相性があるのかもしれません。メベンダゾールの治験はすでに始まっていますが、他のベンズイミダゾール系薬剤も近いうちに研究が進むでしょう。食品への残留駆虫薬やバナナなどの残留消毒抗菌薬は発がん作用を持つ悪役どころか人のがんに効くありがたいお薬に変身する日がやってくるのかもしれません。いやいや是非やってくるでしょう。

 

メベンダゾールと脳腫瘍・転移性脳腫瘍

メベンダゾールはベンズイミダゾール系の駆虫薬。日本では蟯虫治療薬として保険治療が承認されています。多くの寄生虫である回虫、蟯虫、鉤虫、メジナ虫、エキノコックスなど広いスペクトラムを持つ医薬品です。フェンベンダゾールもベンズイミダゾール系駆虫薬であり、メベンダゾールとほぼ同様の抗腫瘍作用を持っていると考えられています。ただし医薬品として承認されていないため、治験としての使用に限られます。

悪性脳腫瘍に対する作用機序

駆虫剤が悪性脳腫瘍に有効性を発揮することが2011年ニューロオンコロジーという学術雑誌に発表されました(Bai RY. et al. 2011) この研究は米国NIHの研究助成を得てジョンスホプキンス大学で行われました。メベンダゾールの使用効果は腫瘍細胞の生育に必須である微小管形成阻害作用であることがわかりました。元は駆虫剤のため消化管からの吸収は20%程度。そのうえ、脳には薬物の侵入を防ぐバリアがあります。メベンダゾールは他の抗がん剤に比し血液脳関門というバリアを容易に通過する特性があり、抗癌作用を発揮すると考えられています。

 

悪性脳腫瘍GBMに対する効果

現在の標準治療はテモダールによる化学療法と放射線療法との併用療法ですが平均生存期間は15ヶ月と言われており、悪性脳腫瘍GBMの5年生存率は10%程度です。

多くの研究が発表されています。1)テモダールは生存率を41.4%延長、2)メベンダゾール単剤が63.3%の生存効果、3)メベンダゾールとテモダール併用の生存効果は72.4%、4)2と3を比較した研究では有意差はなかったなどの報告があります。(Bai RY. et al. 2011)

 

転移性脳腫瘍に対する効果

最近、小細胞性肺癌の末期ステージ4の患者さんの治験において、フェンベンダゾールを選択した一人の患者さんは転移性脳腫瘍他、他の転移巣に対しても劇的な効果があったとメディアで報告されています。この結果からメベンダゾール・フェンベンダゾールは血液脳関門を通過する性質を持つため、転移性脳腫瘍に効果を発揮すると考えるのは早計です。

 

その他の脳腫瘍に対する効果

GBM以外の悪性脳腫瘍として脳悪性リンパ腫、小児の胚細胞腫瘍、髄芽腫には化学療法などの治療法があります。しかし、多発性浸潤性神経膠腫、二次性GBMは決め手となる治療法がありません。これらGBM以外の難治性脳腫瘍に対してメベンダゾール有効との報告があります。(De Witt M. et al. 2017)

 

内服量および内服期間

メベンダゾール駆虫剤は妊婦、授乳中の安全性はCランクなど、安全性に関する長い使用実績があります。具体的な数値ではメベンダゾールは100~200mg/kg量で12週間投与しても子供に安全であるという報告もあります(Messaritakis J, et al. 1991)。メベンダゾールは人のエキノコッカス症の治療に広く使われており、50~70mg/kg/日を6~24ヶ月継続使用した場合、最小限の副作用であったという報告が複数あります(Vutova K.et al.1999, El-On J. 2003, Todorov T, et al. 2005)。エキノコッカス症の別の臨床研究では上限200mg/kg/日を48日投与での耐用性は良く、血清中で最大93ng/mlに対し脳脊髄液には8.6ng/ml継続されました( Bryceson AD, et al. 1982)。その他200mg/kgまでは毎日使用しても安全な用量だとする研究もあります(Messaritakis J,et al.1991, Bryceson AD, Cowie AG, et al. 1982, Kammerer WS & Schantz PM. 1984)。しかし一方で進行大腸癌と肝細胞癌の患者さんに同じ系統の駆虫剤であるアルベンダゾール10mg/kg/日を28日投与した研究では、抗腫瘍効果を示したものの、30%の高率に重度の好中球減少症の副作用を生じたとの報告があります(Morris DL, et al. 2001)。

 

内服量および期間と副作用

・メベンダゾール

体調の良くない悪性腫瘍を持つ患者さんへのメベンダゾールの処方適量および処方期間については今のところエビデンスに基づいたガイドラインは存在しません。投与量は10mg/kg/日を最大量とし、投与期間は最大28日以内とするのが安全と考えます。最大量10mg/kg/日からすると日本人成人の平均体重は55~65kgとして500~600mg/日が安全域内の内服量と考えるのが常識的です。連続14日投与で一定期間の据え置き期間を設ける方法とか、21~28日連続投与で一旦休薬期間を設けるなど、いずれの方法にしても、血液検査の異常の有無を確認すると同時に腫瘍マーカーや画像所見から継続処方の是非を検討する必要があります。

・フェベンダゾール 

メベンダゾール同様、悪性腫瘍を持つ患者さんへの適性処方量および処方期間について、エビデンスに基づいた治療法についての発表はありません。現在のところ、治験例からフェンベンダゾール222mg/日を3日連続使用、4日休薬のケースについての報告があります。

・肝障害副作用による死亡例の報告

駆虫剤は薬剤である以上副作用は必ずあります。メディア報道や闘病ブログを参考に素人判断での安易な服薬は危険であり、骨髄抑制から重篤な肝障害まで色々な副作用が報告されています。肝障害による死亡例の報告もあり、安易な服薬は避けるべきです。

 

<参考>

メベンダゾールには再発予防効果も期待できます。悪性脳腫瘍の患者さんには術後のしかるべき時期からメベンダゾールの処方を検討する価値はあると考えます。しかしメベンダゾール同様、悪性腫瘍を持つ患者さんへの適性処方量および処方期間について、エビデンスに基づいた治療法についての発表はありません。現在のところ、治験例からフェンベンダゾール222mg/日を3日連続使用、4日休薬のケースについての報告があるのみです。⇒私自身はこの方法によりフェンベンダゾールを3ヶ月間内服してみました。

 

ベンズイミダゾール系薬剤

  FDA/EU 日本 主適用 用量(駆虫薬としての使用)

メベンダゾール Mebendazole

ヒト/動物に承認 ヒトに承認 鞭虫症  通常、成人及び小児に対してはメベンダゾールとして1回100mgを1日2回(朝・夕)3日間経口投与する。ただし、体重20kg以下の小児には半量にするなど、適宜減量する。(添付文書より)
アルベンダゾール Albendazole  ヒト/動物に承認   包中症 通常、成人にはアルベンダゾールとして1日600mgを3回に分割し、食事と共に服用する。投与は28日間連続投与し、14日間の休薬期間を設ける。なお、年齢・症状により適宜増減する。(エスカゾール錠200添付文書より)
チアベンダゾール Thiabendazole ヒト/動物に承認   防カビ剤 日本では輸入果物(バナナなど)のポストハーベストの食品添加物として認められている。医薬品としては「ミンテゾール」(万有製薬)の商品名で腸管糞線虫症や旋毛虫症治療用の内服用駆虫薬、動物寄生虫用薬品としても使用されていたが、同等の効果がありかつ安全性が高い新薬イベルメクチンが開発されたために駆虫薬としての製造・販売は中止されている。(チアベンダゾールWikipedia)
トリクラベンダゾール Triclabendazole ヒトに承認/治験中 動物用駆虫剤で承認 肝蛭症 トリクラベンダゾールは、チアベンダゾール系の肝蛭駆除剤であり、チューブリンに結合し微小管の重合を阻害することにより、微小管依存性の機能を抑制し、駆虫作用を示すと考えられている。(参照7) 肝蛭(Fasciola hepatica)及び巨大肝蛭(F. gigantica)以外に巨大肝吸虫(Fascioloides magna)や肺吸虫属(Paragonimus)に対しても有効であり、線虫に対しては活性を示さない。海外では、牛(搾乳牛を除く)、バッファロー(Baffalo)、羊及び山羊に使用されている。推奨用量は牛及びバッファローでは12 mg/kg 体重(経口)又は30 mg/kg 体重(ポアオン)であり、羊及び山羊では10 mg/kg 体重(経口)を投与することとなっている。日本では、牛(搾乳牛を除く)の肝蛭の駆除を目的とした経口投与剤が承認されている。承認された用法及び用量は、製剤0.12 mL/kg(トリクラベンダゾールとして12mg/kg 体重)を1 回強制経口投与することとなっている。なお、ポジティブリスト制度導入に伴う暫定残留基準値1が設定されている。(トリクラベンダゾール.動物用医薬品評価書. 食品安全委員会. 2013年3月)
フルベンダゾール Fulbendazole FDA実験/廃止、EUはヒトに承認、薬局などOTCで購入可能 動物用駆虫剤で承認 回虫症 海外でのヒトの常用量は、100 mg を1日に1回あるいは2回で、連続3日間服用する。(フルベンダゾール.食品安全委員会動物用医薬品専門調査会.2009年11月資料3より)
フェンベダゾール Fenbendazole 動物に承認 動物用駆虫剤で承認 線虫症 イヌの駆虫で50mg/kg/日。ブタは回虫、腸結節虫で3mg/kg/日×3日、鞭虫で15gを1tのエサに混ぜて3-4週間投与。日本での承認は主にブタ。(メイポール10添付文書、Panacur C説明文書)
オクスフェンダゾール Oxfendazole 治験中/動物に承認 事項フェバンテル参照   フェバンテルはプロドラッグであり、フェバンテルが生体内で代謝されてフェンベンダゾールとオクスフェンダゾールになる。
フェバンテル Febantel 治験中/動物に承認 線動物用駆虫剤で承認

線虫症

・条虫症

フェバンテルはプロベンズイミダゾール(体内でベンズイミダゾールに変換)で、線虫や条虫に対する広い作用スペクトルを有する経口駆虫薬である。動物用医薬品として1978 年にオーストラリアで承認されて以来、馬、牛、豚、羊、山羊及び鳥類の駆虫剤として23 カ国以上で承認されている。現在わが国では、本製剤(マリンバンテル:フグ)の他、馬用経口投与剤が承認されている。また、フェバンテルの生理活性を有する代謝物であるフェンベンダゾールを主成分とする豚の経口投与剤も承認されている。本製剤については2004 年7 月に承認され、今回薬事法第14条の4 第1項第1号の規定に基づき、承認より2年が経過したため、2006年10月再審査申請された。(フェバンテルの食品健康影響評価について.動物医薬品評価書マリンバンテル. 食品安全委員会動物用医薬品専門調査会2008年4月より)

ベンズイミダゾール系薬剤の構造式

メベンダゾール、フェンベンダゾールは似通った構造式をしている。(DrugBank.caより)

悪性腫瘍に対する治療について

1 G47Δ療法 医師主導治験による 癌治療ウイルス薬 日本で開発された単純ヘルペスウイルス1型の抗腫瘍作用が医師主導治験により悪性脳腫瘍に有効であることが確認された。 東京大学医科学研究所 2018年7月の中間解析では従来治療の1年生存15%に対し、92.3%と格段に高い有効性を示した。副作用は発熱、リンパ球数減少、悪心・嘔吐。 現在第一三共より先駆け審査申請中。 開発者藤堂教授室直通電話:03-6409-2142 AMED事業に関する問合せ先: 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 戦略推進部癌研究課:03-6870-2221 臨床研究課:03-6870-2229
2 交流電場腫瘍療法 NOVO-TTF   オプチューン療法とも呼ばれている  腫瘍電場治療=抗有糸分裂療法 患者の頭皮に電極パットを貼り弱い周波の電場を発生させ続けることにより腫瘍の増大を抑制する治療法 近くでは脳神経センター大田記念病院 脳神経外科
3 メベンダゾール療法 米国ジョンスホプキンス大学で治験中 成人は500~600mg/日ですが低用量200mg/日を3週間内服、一時休薬し再開、またはさらに低用量を長期で内服。 癌細胞と腸内寄生虫は同じ嫌気性解糖を行っており寄生虫駆除剤であるメベンダゾール、フェンベンダゾールの抗悪性腫瘍効果が2008年以来相次いで発表されている。 がん細胞の増殖の鍵となる解糖系酵素阻害作用と微小管阻害作用が報告されている。悪性脳腫瘍に対し治験が始まっている。副作用はほとんどない。ただし、3週間を超えると肝障害が7.14%、発疹は0.45%ある。
4 フェンベダゾール療法 医師主導治験申請準備 癌細胞と腸内寄生虫は同じ嫌気性解糖を行っており寄生虫駆除剤であるメベンダゾール、フェンベンダゾールの抗悪性腫瘍効果が2008年以来相次いで発表されている。 がん細胞の増殖の鍵となる解糖系酵素阻害作用と微小管阻害作用が報告されている。
5 その他

eGFR抗体薬

免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマム

ITKワクチン

WTYワクチン

IDHI阻害薬

BNCT ホウ素中性子捕獲療法

 

米国治験サイト

メベンダゾールはジョンスホプキンス大学とノースウェルヘルスによる治験が行われています。ジョンスホプキンス大学メベンダゾール第一相試験は2019年1月、研究全体は2020年9月終了予定です。

フェンベンダゾール、メベンダゾールに関する論文

 

【参考文献要旨】

Duan Q, Liu Y, Rockwell S. Fenbendazole as a potential anticancer drug. Anticancer Res. 2013 Feb;33(2):355-62.

BACKGROUND/AIMS: To evaluate the anticancer activity of fenbendazole, a widely used antihelminth with mechanisms of action that overlap with those of the hypoxia-selective nitroheterocyclic cytotoxins/radiosensitizers and the taxanes.

MATERIALS AND METHODS: We used EMT6 mouse mammary tumor cells in cell culture and as solid tumors in mice to examine the cytotoxic and antitumor effects of fenbendazole as a single agent and in combination regimens.

RESULTS: Intensive treatments with fenbendazole were toxic to EMT6 cells in vitro; toxicity increased with incubation time and under conditions of severe hypoxia. Fenbendazole did not alter the dose-response curves for radiation or docetaxel; instead, the agents produced additive cytotoxicities. Febendazole in maximally-intensive regimens did not alter the growth of EMT6 tumors, or increase the antineoplastic effects of radiation.

CONCLUSION: These studies provided no evidence that fenbendazole would have value in cancer therapy, but suggested that this general class of compounds merits further investigation.

 

将来的な抗がん薬としてのフェンベンダゾール

背景/目的:フェンベンダゾールの抗がん作用について評価する。フェンベンダゾールは、低酸素選択的なニトロ複素環細胞毒素/放射線増感剤やタキサンなどと重複するような作用機序をもつ駆虫剤として広く使用されている。

試料と方法:私たちはフェンベンダゾールの単剤と併用療法の抗がん効果および細胞毒性を調べるため、EMT6マウスの乳がん細胞を細胞培養とマウスの固形腫瘍として使用した。

結果:培地のEMT6細胞に対してフェンベンダゾールの集中的な治療は毒性があった;毒性は、培養時間と重度の低酸素状態で増加した。フェンベンダゾールは、放射線やドセタキセルに対する用量‐応答カーブは変化しなかった;しかし、付加的な細胞毒性を産生した。フェンベンダゾールは、最大集中線量でもEMT6腫瘍の成長を変化させなかったし、放射線の抗腫瘍作用を増加させることもなかった。

結論:この研究では、フェンベンダゾールががん治療で有効であるという確証を得ることは出来なかった。しかし、この一般的な化合物の有益性については、さらに研究を進める必要性が示唆された。

Dogra N, Kumar A, Mukhopadhyay T. Fenbendazole acts as a moderate microtubule destabilizing agent and causes cancer cell death by modulating multiple cellular pathways. Sci Rep. 2018 Aug 9;8(1):11926.

Drugs that are already clinically approved or experimentally tested for conditions other than cancer, but are found to possess previously unrecognized cytotoxicity towards malignant cells, may serve as fitting anti-cancer candidates. Methyl N-(6-phenylsulfanyl-1H benzimidazol-2-yl) carbamate [Fenbendazole, FZ], a benzimidazole compound, is a safe and inexpensive anthelmintic drug possessing an efficient anti-proliferative activity. In our earlier work, we reported a potent growth-inhibitory activity of FZ caused partially by impairment of proteasomal function. Here, we show that FZ demonstrates moderate affinity for mammalian tubulin and exerts cytotoxicity to human cancer cells at micromolar concentrations. Simultaneously, it caused mitochondrial translocation of p53 and effectively inhibited glucose uptake, expression of GLUT transporters as well as hexokinase (HK II) – a key glycolytic enzyme that most cancer cells thrive on. It blocked the growth of human xenografts in nu/nu mice model when mice were fed with the drug orally. The results, in conjunction with our earlier data, suggest that FZ is a new microtubule interfering agent that displays anti-neoplastic activity and may be evaluated as a potential therapeutic agent because of its effect on multiple cellular pathways leading to effective elimination of cancer cells.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6085345/

 

フェンベンダゾールは、穏やかな微小管不安定化薬として作用し、多様な細胞経路を変化させてがん細胞死を引き起こす

がん以外の病状に対してすでに試験され、臨床的に承認されているものの、悪性細胞に対して認識されていなかった細胞毒性が見つかっている薬は、抗がん剤の有力候補である。メチルN(6-フェニルサルファニル-1Hベンズイミダゾール-2-yl)カルバメート[フェンベンダゾールFZ]は、ベンズイミダゾール系化合物で、効果的な抗増殖作用をもつ安全で高価でない駆虫薬である。私たちの先行研究では、フェンベンダゾールの強力な成長阻害活性が、プロテアソーマル機能の部分的な障害を引き起こすことを報告した。本研究では、私たちは、フェンベンダゾールが哺乳類の微小管に対し穏やかな親和性があり、マイクロモルの濃度で人間のがん細胞に対して細胞毒性を発揮することを提示している。同時に、p53のミトコンドリア転座を引き起こし、効果的にグルコースの取り込み、ヘキソキナーゼ(HKII)とGLUTトランスポーター類の発現-多くのがん細胞の増殖の鍵となる解糖系酵素を阻害する。ヌードマウスモデルにこの薬を食べさせたところ、ヒトの異種移植細胞の増殖が阻害された。私たちの先行研究とこの結果を合わせると、フェンベンダゾールは抗腫瘍作用をもつ新たな微小管阻害薬であることが示唆され、多様な細胞経路に作用して効果的にがん細胞を消失させる将来性のある治療薬として評価される可能性がある。

Shimomura I, Yokoi A, Kohama I, Kumazaki M, Tada Y, Tatsumi K, Ochiya T, Yamamoto Y. Drug library screen reveals benzimidazole derivatives as selective cytotoxic agents for KRAS-mutant lung cancer. Cancer Lett. 2019 Jun 1;451:11-22.

KRAS is one of the most frequently mutated oncogenes in human non-small cell lung cancer (NSCLC). Mutations in KRAS are detected in 30% of NSCLC cases, with most of them occurring in codons 12 and 13 and less commonly in others. Despite intense efforts to develop drugs targeting mutant KRAS, no effective therapeutic strategies have been successfully tested in clinical trials. Here, we investigated molecular targets for KRAS-activated lung cancer cells using a drug library. A total of 1271 small molecules were screened in KRAS-mutant and wild-type lung cancer cell lines. The screening identified the cytotoxic effects of benzimidazole derivatives on KRAS-mutant lung cancer cells. Treatments with two benzimidazole derivatives, methiazole and fenbendazole-both of which are structurally specific-yielded significant suppression of the RAS-related signaling pathways in KRAS-mutated cells. Moreover, combinatorial therapy with methiazole and trametinib, a MEK inhibitor, induced synergistic effects in KRAS-mutant lung cancer cells. Our study demonstrates that these benzimidazole derivatives play an important role in suppressing KRAS-mutant lung cancer cells, thus offering a novel combinatorial therapeutic approach against such cancer cells.

 

ドラッグライブラリー・スクリーニングによって、ベンズイミダゾール系薬剤がKRAS変異性肺がんへの選択的細胞毒性薬であることを明らかにした

KRASは、ヒトの小細胞性肺がん(NSCLC)で最も変異が頻発する発がん遺伝子の一つである。KRASでの変異はNSCLC症例の30%で検出され、ほとんどはコドン12か13で起こり、その他で起こることは稀である。変異性KRASを標的にした薬の懸命な開発努力にもかかわらず、今のところ、臨床試験で成功した効果的な治療戦略はない。本研究では、ドラッグライブラリーを使って、KRAS活性化肺がん細胞に対する分子標的を調べた。KARS変異型と野生型の肺がん細胞株で、全部で1271の小分子をスクリーニングした。スクリーニングよって、KRAS変異型肺がん細胞に対するベンズイミダゾール系薬剤の細胞毒性効果が同定された。2種類のベンズイミダゾール系薬剤、メチアゾールとフェンベンダゾール-両者とも特異的な構造をもつ-が、KRAS変異型細胞でのRAS関連レシグナル経路を有意に抑制した。さらに、メチアゾールとMEK阻害薬であるトラメチニブの併用療法は、KRAS変異型肺がん細胞で相乗効果があった。私たちの研究は、これらのベンズイミダゾール系薬剤がKRAS変異型肺がん細胞の抑制に重要な役割を果たすことを示し、このようながん細胞に対する新しい併存療法アプローチを提供するものだ。

 

Ren-Yuan Bai, Verena Staedtke, Colette M. Aprhys, Gary L. Gallia, and Gregory J. Riggins.Antiparasitic mebendazole shows survival benefit in 2 preclinical models of glioblastoma multiforme.  Neuro-Oncology 13(9):974–982, 2011.

Glioblastoma multiforme (GBM) is the most common and aggressive brain cancer, and despite treatment advances, patient prognosis remains poor. During routine animal studies, we serendipitously observed that fenbendazole, a benzimidazole antihelminthic used to treat pinworm infection, inhibited brain tumor engraftment. Subsequent in vitro and in vivo experiments with benzimidazoles identified mebendazole as the more promising drug for GBM therapy. In GBM cell lines, mebendazole displayed cytotoxicity, with half-maximal inhibitory concentrations ranging from 0.1 to 0.3 µM. Mebendazole disrupted microtubule formation in GBM cells, and in vitro activity was correlated with reduced tubulin polymerization. Subsequently, we showed that mebendazole significantly extended mean survival up to 63% in syngeneic and xenograft orthotopic mouse glioma models. Mebendazole has been approved by the US Food and Drug Administration for parasitic infections, has a long track-record of safe human use, and was effective in our animal models with doses documented as safe in humans. Our findings indicate that mebendazole is a possible novel anti-brain tumor therapeutic that could be further tested in clinical trials.

 

駆虫剤メベンダゾールは、多形膠芽細胞腫の前臨床モデル2例において生存効果があった

多形膠芽細胞腫(GBM)はよく見られる浸潤性の脳腫瘍で、治療の発達にも関わらず、患者の予後は依然として良くない。ルーティンである動物実験で、私たちは偶然にもフェンベンダゾールが脳腫瘍の生着を抑制することを観察した。フェンベンダゾールは、ベンジミダゾール系駆虫剤で、蟯虫感染を治療するために使用したものだった。その後、ベンジミダゾール系薬剤の体外および体内での実験からメベンダゾールがGBM療法にとって将来性のある薬剤として同定された。GBMの細胞株では、メベンダゾールは、抑制効果のある最大濃度の半分である0.1~0.3μMで細胞毒性を示した。メベンダゾールは、GBM細胞の微小管形成を破壊し、体外活性はチューブリン重合の減少と関連していた。続いて、私たちはメベンダゾールが、同系および異種移植の同所性マウスのグリオーマモデルで、平均生存率を63%まで有意に延長することを示した。メベンダゾールは、米国FDAで承認された駆虫薬で、ヒトの使用の安全性にも長い追跡記録があり、ヒトに安全な処方量で動物モデルでも効果があった。私たちの知見は、メベンダゾールが新規の抗脳腫瘍治療として臨床試験の対象となりうることを示している。

 

悪性腫瘍に対するメベンダゾールの臨床効果

メベンダゾールの脳腫瘍以外の臨床試験については、米国ミシガン大学(Dobrosotskaya IY, et al. 2011)とスウェーデンのウプサラ大学(Nygren P & Larsson R. 2014)の症例報告がある。

2011年:1例は副腎皮質がんステージ4、複数の抗がん剤治療を受けたが効果がみられず、もう治療法がないとさじを投げられた段階になって患者自身がパブメドの文献検索でメベンダゾールの抗腫瘍効果を示した前臨床研究の結果を見つけ主治医に処方を依頼したものだ。メベンダゾール100mg錠一日2錠内服開始し転移巣の縮小を認め19ヶ月間親病巣の増大を認めない時期があった。24ヶ月後に腫瘍の増大が始まった記載がある。

2013年:1例は進行大腸がんステージ4の74歳男性、カペシタビン+オキサリプラチン+ベバシズマブの標準治療を行い治療効果がなくなり、次にカペシタビン+イリノテカンによって治療されたがこの治療も効果がなくなった段階で本人了承の元にメベンダゾール100mg錠一日2錠で6週間使用、6週間経過後に肺とリンパ節の転移腫瘍は完全に消失し、肝臓の転移も著明に縮小した。しかし、元々ある肝転位のための肝機能障害のため一時的にメベンダゾール投与を中止している。初期投与量はわからないが、その後半分量に減らして再開し、その後の検査で主病巣の縮小を認めている。

1例は末期がんの患者さんで腫瘍の部分縮小を認めている。詳細な記載はない。

4例はメベンダゾールの効果を認めていない。詳細な記載はない。

文責:大田浩右  無断禁転載

【引用文献】

Bai RY, Staedtke V, Aprhys CM, et al. Antiparasitic mebendazole shows survival benefit in 2 preclinical models of glioblastoma multiforme. Neuro Oncol. 2011 Sep;13(9):974-82.

Bryceson AD, Woestenborghs R, Michiels M, et al. Bioavailability and tolerability of mebendazole in patients with inoperable hydatid disease. Trans R Soc Trop Med Hyg. 1982;76:563–564.

Bryceson AD, Cowie AG, Macleod C, et al. Experience with mebendazole in the treatment of inoperable hydatid disease in England. Trans R Soc Trop Med Hyg. 1982;76:510–518.

De Witt M. Gamble A, Hanson D, et al. Repurposing Mebendazole as a Replacement for Vincristine for the Treatment of Brain Tumors. Mol Med. 2017 Apr;23:50-56.

Dobrosotskaya IY, Hammer GD, Schteingart DE, Mebendazole monotherapy and long-term disease control in metastatic adrenocortical carcinoma. Endocr Pract. 2011 May-Jun;17(3):e59-62.

El-On J. Benzimidazole treatment of cystic echinococcosis. Acta Trop. 2003;85:243–252

Kammerer WS, Schantz PM. Long term follow-up of human hydatid disease (Echinococcus granulosus) treated with a high-dose mebendazole regimen. Am J Trop Med Hyg. 1984;33:132–137.

Messaritakis J, Psychou P, Nicolaidou P, et al. High mebendazole doses in pulmonary and hepatic hydatid disease. Arch Dis Child. 1991;66:532–533.

Morris DL, Jourdan JL, & Pourgholami MH. Pilot study of albendazole in patients with advanced malignancy. Effect on serum tumor markers/ high incidence of neutropenia. Oncology. 2001;61:42–46.

Nygren P, Larsson R. Letter to editor: Drug repositioning from bench to bedside: tumour remission by the antihelmintic drug mebendazole in refractory metastatic colon cancer. Acta Oncol. 2014 Mar;53(3):427-8. Oct 28.

Todorov T, Vutova K, Donev S, et al. The types and timing of the degenerative changes seen in the cysts during and after benzimidazole treatment of cystic echinococcosis. Ann Trop Med Parasitol. 2005; 99:649–659.

Vutova K, Mechkov G, Vachkov P, et al. Effect of mebendazole on human cystic echinococcosis: the role of dosage and treatment duration. Ann Trop Med Parasitol. 1999;93:357–365.

【添付文書、評価書など】

メベンダゾール錠100(ヤンセンファーマ)添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/800155_6429005F1026_1_08

エスカゾール錠200(グラクソスミスクライン)添付文書

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/340278_6429007F1033_1_05

チアベンダゾール ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%AB

トリクラベンダゾール

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000077546.pdf

フルベンダゾール

https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc4_doubutu_flubendazole_211126.pdf

フェンベンダゾール

メイポール10 添付文書(メイジセイカファルマ)

https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/animalhealth/la/pdf/HMPBK.pdf

Panacur C 使用説明書(メルク)

https://www.merck-animal-health-usa.com/product/canine/PANACUR-C-CANINE-DEWORMER/1

フェバンテル

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/04/dl/s0413-2c.pdf

https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-febantel-hyouka.pdf

マリンバンテル

https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc5_doubutu_mar_200410.pdf

  • 意外な薬ががんに効く

抗がん剤でない薬ががんに効く ⇒世界の研究者らを驚かせている

抗がん剤でない薬ががんに効く ⇒経口非抗がん剤による治療への期待

最近の研究で経口非抗がん剤の一部に高い抗腫瘍効果が発見された。糖尿病、炎症、アルコール依存症、白癬症などの治療薬のなかにがん細胞を死滅させる効果のあることが発見され研究者らを驚かせている。これらの発見は米国ダナファーバー癌研究所、ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学の研究機関であるブロード研究所、ドイツウルム大学などから発信されている。米国では犬の変形性関節症治療薬である抗炎症薬テポキサリン(販売名:ズブリン)、そしてアルコール依存治療薬ジスルフィラム(販売名:ノックビン)の抗腫瘍効果に注目が集まっている。日本でも札幌医科大学佐藤らがノックビンと免疫チェックポイント阻害薬との併用療法の臨床研究を進めている。

※ 抗真菌剤、経口剤イトラコナゾールの抗腫瘍効果についてはすでに2007年4月26日ジョンズ・ホプキンス大のJUN O LIUらによって、足の爪の真菌治療に一般的に使用されているイトラコナゾールが癌の血管新生を阻止する効果を持つことを発見したとACS Chemical Biologyオンライン版に発表している。

悪性脳腫瘍である神経膠芽腫への新しい治療の試み

ドイツウルム大学の一施設研究であるCUSP9とは、標準量の4分の1~5分の1のテモゾロミドを治療期間中継続して経口摂取、このテモゾロミドに9種類の経口非抗がん薬を組み合わせる治療である。すなわち、①制吐剤アピレピタント、②抗菌剤ミノサイクリン、③嫌酒剤ジスルフィラム、④消炎鎮痛剤セレコキシブ、⑤抗うつ薬SSRIセルトラリン、⑥降圧剤カプトリン、⑦経口抗真菌剤イトラコナゾール、⑧エイズ薬リトナビル、⑨抗リウマチ薬オーラノフィンである。⇒分かりやすい一覧表(CUSP9一覧表)

※ テモゾロミドはアルキルカ剤に属する経口投与可能な抗がん剤(商品名:テモダール)、主に星状細胞腫の悪性度の高い脳腫瘍の治療に用いられる。単剤投与の効果は疑問的で多くは放射線治療と併用で行われる。日本では2006年9月承認された。当初は日に300mg内服で月の薬剤費が3割負担で7万5000円と高額だった。2018年からテモゾロミド(後発ジェネリック)は薬価が40%に下がり使いやすくなった。

※ テモゾロミドと併用する非抗がん剤のひとつ、抗リウマチ薬オーラノフィンに注目が集まっているが、米国ではリウマチに対する最も標準的治療薬(アンカードラッグ)である経口剤メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)も注目されている。

 

  • がん治療以外に使用されている薬の抗がん作用を見直す

~ドラッグリポジショニング/ドラッグリバーパス~

ビタミンC大量療法は効くのか?

ビタミンC大量点滴療法が巷に現れたのは約10年前、以来雨後の筍のごとく増えてきました。多くのがん難民、見放されがんの人たちが数十グラムという大量のビタミンC点滴を効くと信じて受けておられます。私自身余命告知を受けた頃、この療法に関心を持ち四国に受診を考えたことがあります。結局は低用量化学療法と出会いビタミンC療法を受ける機会はありませんでした。色々ながん友からこの療法について相談を受けます。Pabmedで検索をしましたが、この療法が効いたという確たる論文には出会いませんでした。そんな時、2017年9月4日の週刊医学会新聞に栄養疫学者として、また査読者として世界的に有名なケンブリッジ大学MRCの今村文昭先生のビタミンCに対する見解を読ませていただきました。『ビタミンC点滴療法に関する唯一のランダム化比較試験と考えられている卵巣がん患者に対する試験(Sci transl med 2014)この論文を分析された結果ビタミンCの抗がん作用については何も言えないに等しい結果であること、またこの論文にはビタミンC点滴療法を支持するための作為が感じられること、著者らの過去の論文、論調でも総じて隔たりが認められ、臨床でも点滴療法に関係しており利益相反が否定できないとしています。有名な論文でも、査読者が査読していてもどうしても不完全なる傾向があり、論文が学術雑誌に出たことをもってエビデンスの確立と考えることはできない。専門家で議論するための土俵に上がったという理解はよいとしています。』

 

  • 緩和医療とは

緩和ケアと言えば、一般には癌末期のケアのことを言います。しかし、今や緩和ケアは早期癌の段階から心や体の苦しみへの緩和ケアを受けたほうが再発も少なく、予後もいいことが判ってきました。私の専門としている慢性痛は精神的にも肉体的にも生活の質においても様々な弊害をもたらします。検査しても異常のない慢性痛は周囲の人々の理解も難しく、詐病からヒステリー、精神症状として、また精神科で身体表現性障害なる病名を付けられることもあります。しかし、全く原因のない慢性痛はありません。今の医学でその原因がわからないというだけで、気のせいとか心の病などとレッテルを貼られることがあり、本人は出口のない、救いのない袋小路に追い込まれます。慢性痛の患者さんに必要なことは、しんどくても辛くても夢と希望を失わないことです。かつて精神分裂病、現在は統合失調症は原因不明の心の病とされてきました。最近の研究では、未だ仮説の域ではありますが、脳内ホルモンであるドーパミン、セロトニンのバランス障害と考えられています。それがその証拠にセロトニンドーパミン拮抗剤SDAにより症状寛解し、社会復帰する人も増えてきました。

手足のシビレ、ピリピリ痛が分りやすい慢性痛です。首や肩がこる慢性のコリや夜寝られない、朝起きられない、日中眠たいなども立派な慢性痛です。最近の治験で慢性痛に昼間活動する自律神経である交感神経の過緊張と慢性痛との関係が明らかにされつつあります。慢性痛に対する治療も格段に進歩し変わってきました。人は褒められると即座に脳内ホルモンが反応し、セロトン、ドーパミンのバランスが調整されます。心の活動、体の活動の基本エネルギーに関与するグルタミン酸神経の過活動を抑制する抗てんかん薬は大切な治療法となりました。交感神経の過活動によって抑えられた副交感神経の機能を復活させる呼吸法(ヨガ、マインドフルネス、サムサーラ)も緩和医療の一つとして大切です。私が専門としているめまい、頭痛、シビレ・ピリピリ痛、睡眠障害は全て慢性痛として生活の質に影響します。癌の緩和医療と同じように、慢性痛の緩和医療も早い段階での介入が大切です。私のホームページでは、めまいとシビレ・ピリピリ痛を見てもらうと、睡眠の大切さ、運動の大切さ、排便の大切さがわかって頂けると思います。睡眠、運動、排便を粗末にした結果、多くの人が慢性痛に苦しんでいます。

緩和医療とは私が処方する夜1回だけのお薬にあなた自身の生活の見直しと改善が一体となって初めて症状は和らぎ、緩和に導かれると思います。

考え方や生活の中身を変えることは簡単なようで意外とてこずります。なぜかと言えば、今の健康への感謝を忘れたあなた自身の大いなる甘えがあるからです。

私自身は8年癌の闘病をしながら明神館クリニックでの仕事を続けてきました。私は癌と共存する道を選択しました。闘病記や闘病ブログは公開してありますので自由に閲覧できます。